磯焼け防止へ新型藻礁

20070330

北海道新聞 2007年(平成19年)3月30日(金曜日)
経済レーダー
磯焼け防止へ新型藻礁
福島・中塚建設など開発
発酵広葉樹詰め、投入
実験でコンブ付着
漁業者も効果に注目

 沿岸からコンブなどの海藻が消失する「磯焼け」を防ごうと、福島町の中塚建設(中塚徹朗社長)は北大水産学部などと共同で、コンブなどの海藻を育てる新型藻礁を開発した。発酵させた落葉広葉樹を内部に詰め「森林の豊かな栄養分を海へ還元する」方法を採用。海藻の成長を促進させる効果が海中投入実験で確認されている。実験は地元福島沖のほか、函館市南茅部地区や九州西部の有明海、八代海でも行われ、福島発の技術が漁業関係者から注目されている。(満園徹)

 「海の砂漠化」と呼ばれる磯焼けが起きると、魚の産卵・成育場になる藻場が広く失われ、ウニやアワビの身入りが悪くなるなど沿岸漁業が打撃を受ける。道内でも日本海側を中心に被害が出ており、上ノ国では昨年六月から、海藻の肥料となるイカの内臓物(ゴロ)を海中に投入する実験が行われた。

 中塚建設は年商約八億円で、そのうち漁港や海岸整備が二億円と二割強を占める。同社は十年前、札幌の建設会社、環境技建(宮崎信弘社長)と福島町内の漁港工事を請け負った際、磯焼けの被害に直面し、その後、環境技建と藻礁の開発に取りかかった。四年ほど前から北大水産学部も実験に参加し始めた。

 藻礁はコンクリートブロック製で、内部に発酵分解させたミズナラやシラカバなどの落葉広葉樹にミネラルやピタミンをつくる微生物を加えたものを詰めている。コンクリートブロックは表面に細かいすきまが無数にあり、水を通しやすい構造。落葉広葉樹の栄養分が海中に流れ出て海藻の成長を促す仕組みだ。

 二〇〇三年十月に福島町月崎の海岸で行った実験では、直径二十二センチ、高さ三十三センチの筒状の藻礁容器三個を沈めた。投下から三十四週目には、落葉広葉樹を入れた容器は、何も入れていない容器に比べ約一・五倍の十三キロのコンプが付着していた。

 さらに、函館市南茅部地区ではコンブ、九州の有明海や八代海ではノリの付着が確認できた。

 新型藻礁は沈める場所の状態によって、ブロックの形を変えるが、基本は海底で安定するよう直径三十センチの半円形、長さは二十センチ,八十センチとなる。環境技建が販売し、価格は長さに応じて一基十五万円-三十万円。

 実験に参加した北大水産学部の学生が三月二日、福島町内で開かれた「浜を豊かにする調査研究発表会」で、新型藻礁、を使った海藻の成長データなどについて報告。集まった町内の漁業者も効果に注目した。

 福島吉岡漁協の桜庭寿彦組合長は「藻場が回復すれば、海藻を餌とするウニの身入りもよくなる可能性がある。この藻礁を福島で使えるよう町と協議していきたい」という。中塚建設の中塚社長は「自社のホームページでアピールするなど新型藻礁を多くの人に知ってもらい、福島発の技術で日本の海を回復させたい」と話している。

開発した新型藻礁に繁茂する大量のコンブ
【写真】=福島町月崎の海岸
*この記事掲載にあたっては、許可をいただいています。*